まえがき

ジムカーナってなんだ?

練習会に行ってみよう。

次は競技会だ。

ライセンスを取ろう。

ハマっちゃったあなたに。

快適ジムカーナのススメ。


慣熟歩行のセオリー

●コースを覚える
ご存知の通り、ジムカーナは、コース通りに走ってナンボの競技である。
だから、なにがなんでもコースを覚えるのは、まず大前提だ。

「コースを覚えるだけでしょ?なんでそんなに騒ぐのさ。」

という人は、この項を読む必要はない。次項に進んでいただきたい。
しかし、実際にジムカーナ場に行くと、広い舗装路面の上にパイロンがポツポツと置かれ、それらを縫うようにコースが設定されている。「これを走りなさい」と言われたら、ほとんどの人が面食らうことは確実だ。
サーキットのように一本道ではないのである。

ジムカーナでは、コースを間違えることを「ミスコース」と呼び、間違えた瞬間からそのトライは無効となってしまう。当然タイムも結果も残らない。
だから、このミスコースはジムカーナ選手にとってはもっとも恥ずかしいミスなのである。

ということで、まずはコースを覚えるコツなどを披露しよう。
ただし、これは筆者のやり方であって、必ずしもこれが万人に向いているわけではないことを、あらかじめ申し上げておく。

 

●コース図は正確なものを。
最近は練習会でも、主催者があらかじめコース図をコピーして配ってくれることが多い。
しかし、個人的な練習会、また競技会でも、掲示されたコース図を書き写して使うという場合もある。こういう時には注意が必要だ。なにしろこれを間違えたら正確なコースなど憶えようがない(笑)。

主催者がコース図を配ってくれた場合でも、油断は禁物である。
路面のコンディションや、実際にパイロン配置をした際に分かった安全上の問題などで、コースが修正が施される場合もあるからだ。この場合には必ずアナウンスや公式通知が行われるが、これを見逃してしまったら、やはり正確なコースは覚えられない。
正確なコース図は、コースを覚えるための第一歩である。考えてみれば当たり前のことだ。

 

●いきなり歩かないで。
さて「コースオープンです!」となると、コース図を睨みつけながら、いきなり歩き出そうとする人がいる。
これはあまりいただけない。まずはコース全体が見渡せる場所で、コース図と実際のコースを照らし合わせてみよう。
コース図というのはほとんどの場合「俯瞰図」だ。
つまり、真上からみた図を平面的に表したものだから、これを視線の高さから見たら、当然ちがって見えるのである。

だいたい、コース図は正確な縮尺で描かれているわけではないし、コース図に描かれているパイロン位置も、パイロン相互の位置関係を大まかに表しているだけである。実際のコース設定では、パイロンを配置する選手の置き方によっては、同じコース図でもまったく違う印象のコースになる。

これこそがまさにパイロンコースのマジックであり、魅力であり、怖さなのである。

実際にコース全体を見回して、コース図と比べて見ると、ときどき「おや?」と思う部分があるものだ。コース図での印象よりパイロン間隔が狭かったり、位置関係が微妙に逆になっていたりすることがある。
ジムカーナのコースというのは、コース図という設計図だけでなく、実際のパイロン配置によっていくらでも変えることが出来るのだ。

 

●コースは「映像」で覚える
前項でも述べているが、コース図と言うのはあくまで「概略図」でしかない。
あくまで通る「順路」を示しているだけであって、憶えなければならないのは、自分の目の前にあるコースである。
したがって、コース図と言うのは憶えてしまえば必要がない。

よくコース図をクルマの中に貼っている人がいる。
まぁこれはお守り程度で、実際に見ながら走っている人はいないと思うのだが、しかし走行中に貼ってあるコース図を見なければならない事態に陥った瞬間に、勝負からは脱落することを意味している。したがって、これはまったく意味がない。

ミスコースが多い人の話を色々聞いてみると、浮かび上がってくる原因はけっこう共通している。
つまり「平面図であるコース図」を、「3次元で見える景色」に変換できていないのだ。
また仮に、ある程度3次元への変換が出来ている場合でも、パイロンを中心とした「静止画像」を積み重ねて行く手法によっている人が多い。あるパイロンに来た時に見える景色、次のパイロンや他のパイロンとの位置関係などを、写真のように記録・・・いや記憶して行く方法である。

この方法は、次項に後述する「ライン」を想定通りにトレースして走っている分には、おそらくまったく問題がない。したがってこれでも充分といえる。この方法でも立派にコースを走りきれる人はいる。
しかし、大きな欠点が一つある。ひとつのターンを忘れてしまったり、クルマの挙動の乱れによって大きくラインが乱れたりして、パイロンを想定した角度から見られない場合には、以後の組み立てがバラバラになってミスコースを誘発する可能性が高いのだ。
つまり、コース全部をひとつのものとして捉えられないので、どこかが途切れてしまうと後が続かないのである。

これを防ぐためには、コースを「動画」として「録画」する、という方法が有効であると考えている。

まるでオンボードカメラで撮影したように、映像を頭の中で作ってしまうのである。
スタートからゴールまでの映像を、完全に頭に「録画」してしまうことにより、自分がこれから行うべき運転のシミュレーションが可能となる。運転席から見える映像をトレースするのだから、そのイメージが間違っていない限り、走り始めても同じ景色が見える。
したがってミスコースしにくい。

筆者の場合、こうして記憶に録画した映像をもとに、今度はこれを「3次元グラフィックス」に作り直すイメージで記憶する。
つまり、コンピューターグラフィックスのように、仮想のコースを頭の中で構成してしまうのである。
こうすると、コースをありとあらゆる角度から見ても、自分の位置をシミュレーションすることが出来る。スピンをしようが大きくラインを乱そうが、その時に見えるであろう景色も「見える」のだ。
さらにこの方法のメリットは、自分のクルマの動きを、外から見つめるシミュレーションすら可能なことである。実際には、自分ができる運転と、自分のクルマの挙動を正確に把握することが前提なのだが、こうした方法もある・・・ということは参考にするといいだろう。

 

●キーワード「ライン」
コース図をみた初心者の人が、最初はどうしてもやってしまうのは、パイロンを「点」として、それを直線的に結んでしまうことだ。

しかし、パイロンというのは「そこを通らなければいけない」という「旗門」の目印に過ぎず、その旗門を通過さえすれば、どういうルートで通ろうと自由なのである。
したがってここに、同じパイロンコースを走っても大きくタイムが違ってくる、「秘密」のひとつが隠れているといえよう。

知っての通り、「クルマは急に曲がれない・止まらない」。
だから、コーナーでは曲がれるギリギリの速度まで減速を行わなければならないし、次の加速のために出来る限りアクセルを早く開けなければならない。
実はこの、「ギリギリ」「出来る限り」を、もっとも効率的に実現させるために、クルマをトレースさせる「道」が、いわゆる「ライン」と言われているものなのである。よく耳にする「アウト・イン・アウト」などはその一例だ。

しかし、ラインを構築するというのは、生半可なことではない。考えるべき要素は無限にあるからだ。
例えば上記の「アウト・イン・アウト」は、コーナリング半径を大きく取れるから、スピードを上げることはできるが、相反して距離が多くなる。半径の大きな円周をトレースするのだから、当然のことだ。
では、距離を稼ぐために小さい半径のコーナリングをしたらどうなるかといえば、当然スピードは落ちてしまう。

スピードを取るか距離を取るか、これはジムカーナにおけるライン構築では最大の命題だ。この選択はコース全体をどう攻めるかという「コース全体の攻略」の中で決まるものであり、ひとつのコーナーだけを見ても意味がない。ゴールタイムという「結果」を出すために、各コーナーという「プロセス」が存在する。間違ったプロセスをいくら積み重ねても、いい「結果」は望めないのである。

では、どういうラインを考えればいいのか?

実は、これに答えるべき「正解」は.・・・・・・・ない(^_^;)

・・・・でもそれじゃ話にならないから、構築するにあたって考慮すべき「要素」のいくつかを例示してみよう。
くりかえし断わっておくが、これは筆者の例であり、必ずしも万人に向いた方法でもなければ、正解でもない。また、考えるべき要素全体のほんの一部でしかないし、しかもこれらを体得する唯一の方法は「経験」でしかない。

アクセルが早く開けられること
実はこれが最重要な要素である。というより、ほとんどこれに尽きる。ラインを構築する最大の目的は、より速くコーナーを抜けることであり、速くコーナーを抜けるためには早くアクセルを踏むのがもっとも手っ取り早いのである。
しかし、漠然と「アクセルを早く開ける」といっても分かりにくい。次項以降はそのシチュエーションごとの応用例である。

大きく回るか小さく回るか
たとえば、1本のパイロンを中心にしたコーナーでも、サイドを使わずに回るか、サイドターンで小さく回るか、2つ選択がある。
この場合、一番選択を左右するのは2つある。まずこの次のパイロンとの距離・位置関係、次に車両の違いだ。

次のパイロンとの位置関係
1本のパイロンを通過したあと、次のパイロンまでに充分長い距離がある場合には、無理にサイドを引く必要がない場合がほとんどだ。この場合、なるべく外からオーバースピードにならないようにアプローチし、アクセルを開けて外側へ膨らんで行く。比較的単純なラインといえる。
しかし、こういうシチュエー ションはほとんどない(^_^;)たいていは次のパイロンが待ち構えているのである。
パイロンを右に回った後、間髪入れず左コーナーがまっている場合など、最初のコーナーをいくら速く抜けても、次のコーナーを回れなければ意味がない。右図でいうと点線のラインだ。この場合、1番パイロンは速く抜けられても、結局2番パイロンの進入が苦しくなり、その後のラインが大きくなる。さらにこの後にパイロンがあった場合、このラインでは全体としてまったく意味なさない。
したがって、最初のコーナーを減速して小さく抜け、次のコーナーの出口でアクセルを開けられるラインを構築する、つまり実線のラインを採用する。
また、こうした低速セクションだけでなく、2速〜3速のコーナーなどでは、次のコーナーにGを残さないラインを考えたり、減速しやすいラインを想定する必要がある。

車両の違いによる差
上記のようなアプローチの場合、例えばシティやCR−Xのような車両と、ランサーのような車両では、狙うラインは同じでも、必要な操作は違う。例えば1番パイロンを小さく回るにしても、小さいクルマの場合はサイドターンをしない方が速いことも多い。サイドターンは、失敗すると場合によっては失速を招くこともある。
一方ランサーなどの大きいクルマは、すでに最小回転半径からして大きいから、サイドターンなしでは曲がれない。
また、サスペンションの特性によって、小さいクルマでもサイドターンが必須の場合もある。
こうした車両ごとの特性に応じて、ラインを構築する必要がある。
 

●情報を収集する
ドライかウェットか
雨が降っていれば当然ウェットである(^_^;)。しかし、一概にウェットと言っても、会場によっては全然違う。たとえば浅間台スポーツランドと関越スポーツランドでは、同じ雨と言ってもまったく別物だ。
さらに、同じ会場でもヘビーウェットとそうでない場合でも大きく違う。
水溜まりがライン上、特にブレーキングポイントにあったりすれば、ハイドロプレーニングを起こしてあっという間にロック、という想定もできる。

路面温度
路面温度は思っている以上に重要な要素である。
タイヤのゴムというのは、ある程度暖かくないと充分なグリップを発揮しない。一方、あまり熱くなると、今度は逆にどんどん摩擦係数が下がってしまうやっかいな性質を持っている。いわゆる熱ダレというやつだ。
すべての操作は、結局タイヤが路面に作用することによって実現されるのだから、タイヤだけでなく、もう一方の路面に気を使うのは当然といえば当然。特にSタイヤなどは、使用に向いた温度域が設定されているので、路面の温度には気を使う必要がある。冷たければグリップしないし、熱ければゴールまでグリップが維持出来ない。
人によってはレーザー式温度計なんかを持ってる人もいるけど(^_^;)、要は熱いのか冷たいのかが分かればいいので、とりあえず触ってみるなどして体感するのがいいだろう。

路面のうねり・傾き・段差など
平らに見えるジムカーナ上でも、実際にはかなり路面のうねりや傾きがある。またサーキットでも、コーナーにはカントが付けられているのが普通だ。
こうしたうねりや傾きは、予想以上にクルマの挙動に影響を与える。
例えば、ターンの進入が上り状態、後半が下り状態になる場合など、進入でサイドが効きにくく、後半でテールが止まらない・・・という状態が想定できる。また、カントがついているコーナーと、そうでないコーナーでは、ブレーキングやコーナリング中の姿勢変化が大きく違う。

舗装の状態・路面の汚れなど
一口に舗装といっても、千差万別である。サーキット舗装のように目が細かく、グリップも高い舗装があれば、風化してごつごつした状態、砂が浮いたような状態の舗装もある。こうした路面が混在している会場もある。
こうした状態によって、グリップが違うのは当然だから、これを想定した走りを構築する必要がある。
また、場所によっては埃が乗っていたり、処理しきれていないオイルが残っていたり、路面の状況というのは常に同じではないのである。

 

●イメージトレーニング
こうして、コースを覚え、ラインを構築し、路面の情報を入手したら、これらの情報を総合して、最終的に走るイメージを作ってしまうことが重要だ。

これがいわゆる「イメージトレーニング」というものである。

競技会などに行くと、走行前に車両の近くや、またはコックピットで、目をつぶってなにやら怪しげな挙動のドライバーが多くいるが、あれはまさにイメージトレーニング中。外から見ると変な姿だが、非常に重要なプロセスなのである。

基本的には、コースを覚える時に「記憶」した『映像』を再生しつつ、自分が通るべきラインをトレースし、そのためにはどういう操作を行えばいいのかを検証する作業だ。この時に、自分の行った操作に対し、クルマどう動くかは、あらかじめくりかえし練習をし、体に叩き込むしか方法がない。さらにここに路面の状況を加味し、予想外に曲がるかもしれない、止まらないかも知れない・・・などというシミュレーションを行うわけである。

筆者の経験で行くと、ドライバーの技量が同じなら、ここでいかに具体的なイメージを構築し、頭に「プログラム」出来るかで、ホントに勝負は8割方決まっていると考える。
このイメージがより正確なら、イメージトレーニングで得られるタイムと、実際のタイムとの差はほとんどない。トップドライバーともなるとコンマ数秒と変わらないこともある。どれだけこれが重要な作業かが分かるだろう。

 


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